今年になって新刊本として『新版 北欧神話』が発売されたことを以前にご紹介したが、中島孤島は「北欧神話」だけでなく、「ギリシャ神話」などその他の神話の翻訳も多く手掛けている。「神話」と名の付く著作をざっとあげてみると下記のようになる。
1919(大正8)年『希臘神話及北欧神話』杉谷代水、中島孤島 冨山房
1919(大正8)年『新編ギリシヤ神話』天祐社
1921(大正10)年『ギリシヤ神話』早稲田大学出版部
1924(大正13)年『ギリシヤの神話』イデア書院
1924(大正13)年『神話と伝説 ギリシヤ・ローマ』大洋社出版部
1927(昭和2)年『神話伝説大系 希臘羅馬篇』近代社
1928(昭和3)年『神話伝説大系 埃及・バビロニヤ・アッシリヤ篇』近代社
1929(昭和4)年『神話伝説大系 英蘭神話伝説集』近代社
1933(昭和8)年『ギリシャ・ローマ神話と伝説』太洋社出版部
1933(昭和8)年『神話伝説大系ギリシヤ・ローマ神話伝説集』誠文堂
1933(昭和8)年『エジプト・アツシリア・バビロン神話伝説集』誠文堂
1934(昭和9)年『イギリス神話と伝説』太洋社出版部
1934(昭和9)年『神話伝説大系イギリス 神話伝説集』誠文堂
1935(昭和10)年『神話伝説大系ギリシャ・ローマ神話と伝説』趣味の教育普及会
1938(昭和13)年『ギリシヤ ローマ神話と伝説(五版)』大洋社出版部
1938(昭和14)年『エジプト・アツシリア・バビロン神話と伝説(三版)』太洋社出版部
1948(昭和23)年『ギリシヤ神話』童話春秋社
1954(昭和29)年『少年読物文庫 ギリシャ神話』同和春秋社
1979(昭和54)年『世界神話伝説大系 エジプトの神話伝説』名著普及会
1981(昭和56)年『ギリシア・ローマの神話伝説〔Ⅰ〕〔Ⅱ〕〔Ⅲ〕』名著普及会
1981(昭和56)年『イングランドの神話伝説』名著普及会
こうして羅列してみると、同じ内容の神話が別の出版社から発行されていたり、タイトルは少し違ってもおそらく内容は類似であろうものもあるだろうと思われる。また昭和初期に書かれたものが昭和後半になって復刻版の形で出ていたりする。
しかし、いずれにしても中島孤島がヨーロッパや中東地域の「神話」翻訳にかなり力を注いでいた時期があることが改めてわかった。
また、これを見ていると、中島孤島が「神話もの」に取り組むきっかけとなったのは、1919(大正8)年に杉谷代水訳の「ギリシャ神話」に解説を加え、さらに「北欧神話」を増補するという仕事をしたことだったようにみえる。
その後、中島孤島自身も「ギリシャ神話」の翻訳を手掛けるようになるが、すでに翻訳が世に出ているものをなぜあえて訳していこうと考えたのか、その動機について次回触れることにしよう。