中島孤島の著作と関係のある挿絵画家の一人に、水島爾保布（1884（明治17）年生まれ）という人がいる。
爾保布は「におう」と読むそうだが、完全な筆名というよりも本名も「爾保有」で同じ読み方であり、印象的な名前だ。
水島爾保布については、プロフィールが詳しく記述されている記事があまりなく、どのように活躍していた人だったのか、まだ調べ切れてはいないが、肩書は「日本画家、小説家、漫画家、随筆家」ともあり、かなり多才な人だったらしい。
画家としてだけでなく、文芸同人誌『モザイク』にも同人として参加し、小説や戯曲を発表していたとのこと。この『モザイク』という雑誌には中島孤島も数回執筆したことがあり、その意味で中島孤島と水島爾保布の接点はそこでもあった可能性はあるが、二人の直接的なかかわりは、水島爾保布が模範家庭文庫の『西遊記』の装幀、挿絵を担当したことによる。
『西遊記』の挿絵や装幀を見ると、とくに黄色の地に黒い線で描かれただけのイラストなどはとてもモダンな雰囲気がある。ほかにも多色刷りの挿絵があり、それはまた違う雰囲気になっている。日本画出身とはいえ、いろいろな画風をこなすことができた人なのかもしれない。
文芸誌『モザイク』についても、またいつか別途とりあげてみたい。
